2018年1月27日土曜日

バレンタイン特別企画ガーナ産カカオ豆からチョコレートを手作りする~Bean to Bar

以前、ココナッツオイルとココアパウダーでチョコレートを作るワークショップを開催したことがある。
http://sekaihiroshi.blogspot.com/2017/10/blog-post.html

後日、同僚に同等な品を振る舞ったが「オイル臭いし焦げ臭い。(このチョコレートは出来そこないだ。食べられないよ)」と言われた。
正直、匂いは承知してたが、気にならないだろうと少し見くびっていたので意外だった。
同僚達にはお土産でチョコレートを渡すことがあり、舌が肥えてきたのだろう。活動も終盤になり、今までは遠慮していたことを言えるようになったこともある。
ぼくが先日ガーナ食そのものを否定したことに対する腹いせかもしれないが、正直な意見は有難かった。
「一週間待ってください。本当のチョコレートをご用意しますよ。」と見栄を切り、新しいチョコレート作りが始まった。

ココナッツオイルとココアバター(カカオバター)


ココナッツオイルの融点は25℃程度。ガーナの常温では溶けるため要冷蔵で、外に持ち出す時には保冷する必要があった。チョコレート作りに使う場合、量が少ないとマーガリン並みの固さにしかならず、大量に入れるので、匂いの少ないものを選ばないといけない。

フレッシュなカカオの実

カカオから抽出されるココアバターは融点35℃なので常温保存可で、炎天下に晒すなどしなければ問題なく外へ持ち出せる。本当のチョコレートの味を求めるためにもココアバターを探したが、スキンケア用に他の成分が配合されたものしか見つからなかった。

究極のカカオ豆を求めて


カカオ農家にはあるのではと期待し、場所を聞いて尋ねた。だが農家の仕事は収穫、干してから出荷するまでだった。ただそれは覚悟していたので、豆からチョコレートを作ろうと腹を決めた。

天日干しされる収穫されたカカオ

豆の値段はキロ7.5GHS(日本円で300円程度)だった。相場が判らなかったがガーナの物価をしても高いと感じなかった。調べたところ、変動はあるが国際取引価格で1㌧3,000$位だった。大体の換算で1キロ当たり300円強。実際の農家の出荷価格はもっと安いだろうから、図らずしてフェアトレードを行っていたことになる。我ながら持っていると思わせたが、農家からすれば我ながらボッてると思ったかもしれない。しかしこの際、win-winとしたい。
それを2キロ分貰った。秤を使わない丼勘定で心配だったが、自宅で計量すると2.8キロあった。

農家までの地図。これを頼りにノーミスでたどり着いた。今の世の中にはこの地図のように単純明快なものが必要だ

過程と材料、器具


チョコレートは大まかにこの過程を経て作られる

工程
1焙煎(その前に豆を洗浄することもある)
2皮むき
3精錬
4テンパリング
5型入れ、熟成

材料
カカオ豆(今回は150g程度を使用)
砂糖
粉末乳

器具
焙煎するもの(オーブンやフライパンなど)
ミルサーかフードプロセッサー
すり鉢、すりこぎ


焙煎


先ずは焙煎からで、120°130°20分~40分程度炒った。

このごろ温度計が大活躍

焙煎前の豆は酸味を含んだ香りが強いが、次第にコーヒーにも通じた芳香に変化してゆく。

焙煎する装置がないのでフライパンを使用
炒ったカカオ(実はアーモンドとか)


殻剥き


その後、殻を剥く。予想通り手間であったが、炒ったことで剥きやすくなった。胚芽の部分は舌触りに影響するので極力排除した。

これが胚芽


ちょっとした工夫


固い殻には鋏で割れ目を入れ、豆を手に取る皮むき殻を捨てるの一連の作業が効率よく行えるポジションを探った。元々の要請であったKAIZENをガーナで普及できず、自ら実践しているのは皮肉なことだ。

作業の末、理想的なポジショニングを編み出した。ガーナ人も機械や設備がないから仕事が捗らないと嘆くなら、現状を認めてできることをしてほしい


粉砕


殻からカカオニブと呼ばれる中身を取り出し、それを砕いて練ってペーストにする精錬(コンチング)を行う。
殻を剥いてカカオニブを取り出す

ミルサーにかける
プロの業者や工場ではコンチングマシーンと言う機械を使い12時間~70時間練り続け滑らかなペーストに仕上げる。これが手作りと最も差が出る工程になる。
粉砕はミルで行った。コーヒー豆を挽いたような状態から摩擦熱で脂分が溶け出しペースト状に変化したものをカカオマス(チョコレートリキュール)という。

先ずは粉末状になる
脂が溶け出しカカオマスに変化する

ココアバターは人力では作れない


それを圧縮するとココアバターが抽出され、搾りかすを乾燥させたものがココアパウダーになるが、粘土のような状態から油を搾りだすのは圧縮機がないと無理だった。

猫の手も借りたい。餌あげてるんだから仕事手伝え。


精錬(コンチング)


コンチングを家庭用のミルやフードプロセッサーで続けると、カカオマスの粘度でモーターに負荷がかかり焼き切れるので、すり鉢とすりこぎの作業に切り替える。

ひたすら擦り続けるのみ

この作業が最も骨が折れ、いくらゴリゴリやってもカカオの細かい粒が残る。夜も更けたので本日の作業を切り上げた。

翌日に持ち越す


翌朝チョコレートは固まっていた。食べるとざらついてはいるがチョコレートらしくなっている。

見事に固まっている。手が痛くなったので手袋を着用。


トラブル発生


だが湯せんで溶かしている最中、水が混入しボソボソになった。本当にここは注意すべきだ。
再度ミルにかけたりしてペースト状に戻し、滑らかにはなったがザラザラは残っている。諦めて次に移る。

見た目の滑らかさは戻った


ミキシング


砂糖と粉ミルクを混ぜる。カカオの味を確認したかったので、砂糖を20%、ミルクを10%程度に留めた。

粉ミルクと砂糖を控えめに入れてゴリゴリ


テンパリング


砂糖は粒子が粗いと、なかなか溶けずますます食感が悪くなる。事前に細かく擦っておくなどした方が良い。
次はテンパリング。湯せんで50℃まで温め、冷水で27℃まで冷やしてから、30℃まで戻す。
この作業は、砂糖や脂分が浮き出るブルームという現象を防いで、滑らかな口当たりになる。
このテンパったペーストを型に流し込むが、作業者も完全にテンパることうけあい。

直火だと焦げる可能性がある
先ずは50℃
27℃→30℃。温度管理が微妙で写真どころではなかった。

ナッツでごまかす


このまま固めてもボソボソ感が気になると思い、プレーンの他に砕いたピーナツを混ぜたものも作ることにした。

ナッツも炒って皮をむく

ピーナツもゴリゴリ


型入れ


冷蔵庫でなく、常温で3日ほど置くと熟成されるという。市販品の場合1週間ほど寝かすという。

型入れ終了、既に見栄えは悪いが、やっと作業から解放された嬉しさでいっぱいだった


実食


機は熟した。製氷用の型を使ったので、型入れと取り出しに難儀し見栄えはしなかった。これでは、握手会、撮影会で推しメンを前に「これボクの手作りチョコなんですぅ~。食べてくださ~い。グヘグヘ」と臆面もなく差し入れても、即行ゴミ箱行き、インスタにすらアップしてもらえないだろう。

完成品。グヘグヘ、インスタ萎え

さてお味は


云われる通り固まった直後より風味が向上していた。豆の時は直後に強い苦さを感じていたが、炒る、練る、熟成の過程、日数を経るほど、ほのかな苦みがじわじわと余韻として残るマイルドなものに変化していくようだった。
安価なカカオ○○%といったのはただ苦いだけだが、ビターなチョコレートを好み、コーヒーをブラックで飲む人には受けると思う。
食感は意外に固く、ザラつきボソボソは否めないが、これはこれで焼きチョコのようで許せた。ナッツ入りの方はザラついた部分がかなり誤魔化されていた。
1週間経つ頃には食感も気にならなくなってきた(慣れただけか?)しかし、風味も薄れている感じもしたので、熟成は3日前後がベストかもしれない。
パンや菓子に使うのも食感が気にならなくなりそうで、応用できるのは間違いない。